原城跡

原城は、長崎県南島原市南有馬町乙にあった日本の城で、明応5年(1496年)に「日野江城」の支城として有馬貴純によって築かれました。有明海に張り出した丘陵を利用して造られた城で、本の丸、二の丸、三の丸、天草丸、出丸などで構成されていました。
有馬氏が日向国延岡城に転封となり、その後、元和2年(1616年)に松倉重政が日野江城に入城しましたが、元和4年(1618年)に「島原城」築城した事により、一国一城令によって「日野江城」と「原城」は廃城となりました。

寛永14年(1637年)、廃城となった原城を舞台に「島原・天草一揆」が起こりました。「島原の乱」などと呼ばれるこの一揆は、松倉勝家が領する島原藩のある肥前島原半島と、寺沢堅高が領する唐津藩の飛地・肥後天草諸島の領民が、圧政・重税に耐えかねて起こした反乱で、これにキリシタン迫害や飢饉の被害も加わり、大規模な反乱となりました。
島原の領民と天草の領民によって一揆が画策されていましたが、その首謀者たちは、キリシタンの中でカリスマ的な人気を博していた当時16歳の天草四郎を一揆の総大将として決起しました。

当初は一揆群が優勢でしたが、やがて守勢に転じ、原城に籠城しました。幕府軍は12万人で取り囲み、4ヵ月かけて鎮圧し、一揆軍のほぼ全員、3万人以上のキリシタンや農民が命を落としました。一揆軍で生き残ったのはたったの１人とされています。後に原城周辺からは沢山の遺骨や遺品が出土されました。

現在では、2018年に世界遺産に登録された『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』の構成資産のひとつとして、観光客が訪れています。

　✟　原城跡を巡る　✟　

1⃣
大手口跡

原城の駐車場は２ヶ所。国道251号沿いの「原城跡入口駐車場」と、原城温泉真砂付近の「大手町駐車場」。メインの本丸跡付近には駐車場はありません。どちらから歩いても、本丸跡まで約１km。今回は「大手町駐車場」に車を停め、Let’s Walking！！

大手とは城の正面あるいは正門にあたる部分で、三ノ丸の東側に、海に面して大手口が設けられていました。原城の大手は、有馬氏の本城であった日野江城方向に向いていることから、「ひのえぐち」とも呼ばれました。
この辺りの発掘調査で、通路の一部らしき玉石敷きや、大量の石で埋められた通路を確認しました。また銃弾や人骨片などが見つかっています。
2⃣
三ノ丸跡

大手口跡より少し進むと、右手に広がる土地が「三ノ丸跡」です。

三ノ丸は、原城の中で最も北側に位置します。自然の地形を生かした土づくりの構造の曲輪(くるわ)で、周囲は約６万㎡ありました。
島原・天草一揆の際には、深江村、布津村、堂崎村、有家村、有馬村などの一揆勢によって守備されました。
写真の左手側が大手口、右手側が三ノ丸だったようだ。
3⃣
分岐点

３方に分かれる分岐点。まずは「本丸」を目指します！！

ここから「大手口駐車場」まで270m、「大手口」まで120m、「本丸」まで530m、「板倉重昌碑」まで60m、「仕寄場」まで180m、「原城跡駐車場」まで400mです。
4⃣
二ノ丸跡と、二ノ丸出丸跡

道路を挟んで、左手側(海側)が「二ノ丸跡」、右手側(陸側)が「二ノ丸出丸跡」です。「二ノ丸跡」には、『世界遺産長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』のプレートが建っています。原城跡はこの構成資産のひとつとなっています。

この一帯は、原城のほぼ中央に位置する二ノ丸跡です。自然地形を活かした中世的な土造り曲輪であり、面積は８万㎡余りと、原城の中で最も広大な曲輪です。二ノ丸の北西部は出丸となっています。島原・天草一揆では、出丸の先端付近が戦いの最前線となりました。
5⃣
空堀跡

原城本丸の入口向かいにある、凹んだ土地が、「空堀跡」です。

本丸入口前方にある谷上の地形は、本丸の守りを固めるために造られた空堀の跡です。
築城より400年以上が経過し、自然崩落などにより大きく広がっていますが、一揆の様子を描いた史料には、縦5間(10m弱)、横20間(39m余り)と記されています。また空堀内部に小屋が立ち並ぶ様子が描かれており、空堀の底にも一揆勢が駐留したと考えられます。
6⃣
本丸跡

いよいよ、原城跡の一番の見どころ、「本丸跡」へ。本丸跡周辺には駐車場はありません。
郷土の彫刻家・北村西望氏の造った天草四郎像や、有明海をバックにそそり立つ十字架など、幾つかの像や石碑もあります。
✟ 本丸跡について、続きはコチラ ✟

本丸は、原城で最も重要な場所です。16世紀末頃には日本の城郭で本格的に導入され始めた石垣で全体を囲まれていました。島原・天草一揆の鎮圧後は、城の破壊命令が出され、発掘調査で石垣の破壊の痕跡などが多数確認されています。
7⃣
板倉重昌碑

本丸見学後、国道251号線へ向かって戻ります。3⃣の分岐点で「大手口駐車場」ではなく、「原城跡駐車場」の方へ進みます。するとすぐに石垣に囲まれた石碑があります。
✟ 板倉重信碑について、続きはコチラ ✟

板倉重昌は、一揆を鎮めるための幕府軍の総大将として、深溝藩(愛知県三河地方)より派遣された人物で、自ら原城に攻め込み戦死しました。
現在設置されている供養碑は、延宝9年(1681)されましたが、当時は幕府に許可されず、寛政9年(1797)に現在地に設置されたものです。
8⃣
仕寄場

更に国道251号へ向かって下ると、「仕寄場」の説明パネルがあります。現在「原城跡駐車場」がある向かい側一帯が、島原・天草一揆の際の仕寄場であったそうです。

仕寄とは、城などに攻め寄せる際に設けられる構築物であり、仕寄が築かれる場所を仕寄場と呼びます。
原城二ノ丸の出丸、及び北三ノ丸に接する前方の低地一帯には、立花、松倉、有馬、鍋島などの軍勢が仕寄場を構えました。