平和記念公園レストハウス

平和記念公園 と 原爆ドーム を結ぶ、元安橋の袂に建つ建物です。建物は、1929年(昭和4年)に大阪に本店のあった「大正屋呉服店」の新館の店舗として建てられたものです。当時としては珍しい鉄筋コンクリートのモダンな建物で、地上3階地下1階建です。
1943年(昭和18年)、繊維統制令により呉服屋は閉鎖しました。そして1945年(昭和20年)8月6日8時15分、広島への原爆投下により、爆心地から170メートルの至近距離で被爆しました。屋根は押しつぶされ、地下室を除いて全焼しましたが、爆心地側に開口部ほとんどなく、強固な建物であったため、建物としての基本的形態はとどめました。被爆時この建物で37名が働いていましたが、地下室にいた1名を除いて全員が亡くなりました。

戦後は直ちに改修され、燃料会館として利用されました。1957年(昭和32年)には広島市東部復興事務所が置かれました。
1982年(昭和57年)からは、平和記念公園レストハウスとして観光案内所や休憩所として使用されましたが、老朽化のため、2018年より改修を行い、2020年(令和2年)7月にリニューアルオープンしました。
現在は、１階が観光案内所・売店、２階に休憩喫茶ホール、３階に展示室１、地下１階に展示室２があります。
フリーWi-Fiも利用できますので、旅の途中にちょっと一息つきながら、プランを考えたりするのに良いです。

１階には観光案内所があり、広島の観光案内、パンフレットの提供ほか、ピースツアーなど街歩きのプランの提供もしてくれます。広島のお土産などが揃う売店「レストハウスショップ」を併設しており、オリジナル商品も販売されています。
また１階の通路には、被爆の痕跡が残る建物部分が、ガラスに覆われて保存され、説明版が設置されています。

２階は休憩喫茶ホール・ピアノカフェとなっており、ドリンクやアイスクリームなどが販売され、被爆遺品であるピアノが展示されています。
このピアノは、1926年米国のボールドウィン社製で、同年ロサンゼルスで生まれた明子さんが愛用していました。明子さんは学徒動員中に爆心地から約1㌔で被爆し、翌日亡くなりました。明子さんのピアノも、自宅で被爆し、多くのガラス片で傷ついていました。そのピアノが、2005(平成17)年に修復作業を終え、被爆60周年平和祈念コンサートで美しい音色を響かせました。その後被爆遺品として常設展示されています。

３階の展示室１では、レストハウスのある旧中島地区の歴史と現代への歩みをパネルで紹介しています。
また戦前から戦時中の広島・呉を舞台にしたアニメーション映画「この世界の片隅に」の一部が上映されています。この作品に、レストハウスの建物、当時の大正屋呉服店が忠実に映し出されているのです。
また、天井裏の被爆の跡が見えるように窓枠と説明パネルが設けられていました。

地下１階の展示室は、ほぼ被爆当時の姿で残された地下室と、地下室で奇跡的に生き残った故・野村さん(当時47歳)の証言などが展示されています。
野村さんはたまたま地下に書類を取りに降りていたため、外傷的には軽傷で助かりましたが、その後放射線の急性症状に苦しみました。
被爆時には37名が働いており、野村さんの手記によると、即死を免れ建物の外に避難した人は男性4人・女性4人いたそうですが、その後死亡したと推測されています。野村さんは爆心地付近で生き残り、被爆直後の爆心地の状況を知るほぼ唯一の人と言われました。